1万時間ルールって、自明なことだよね...?

「1万時間ルール」というものを聞いたことはあるだろうか。これは何事も1万時間打ち込めば、その道で一流となれる、という定説である。私はギターの練習についてネットで調べている時にこのルールを知った。
このルールはイラストや楽器演奏の練習の大切さを説くために引き合いに出されることが多い。曰く、才能云々言う前に手を動かせ、天才と言われている人は皆すさまじい練習量をこなしているのだ、と。
確かに、一流のプロというのは、絵でも楽器でも、それが生活の一部となっていて、並の人間では考えられないほどの時間を費やしているものである。私の知る限り、どんなギタリストでも上達するために必要なこととして、「練習」を挙げる。不思議なくらいに「大して練習してないのに、こんなに演奏の上手な俺様」みたいなタイプはいない。

ところで、1万時間とは、一体どれほどの量なのだろうか。
1日に3時間ギターの練習をするとしよう。1日3時間を365日休まずに続けた場合、9年ちょっとで1万時間に到達する。体調を崩したり、忙しかったりで3時間の練習時間が取れないこともあるだろうから、ざっくりと10年かかると思っていたほうがいいだろう。きちんと集中した、有意義な練習という大前提も忘れてはいけない。ダラダラと練習して、時間を稼ぐのでは本末転倒だ。
そう、1万時間分の練習をするためには、毎日休まずに3時間続けても、10年近くかかってしまうのである。気の遠くなるような話だ。イラストを書き始めたばかりの人や、楽器を始めたばかりの人にこのことを教えたら、もう嫌になってしまうかもしれない。

では、1万時間もの練習を達成できるのはどういう人か。答えはとてもシンプルで、「練習自体が楽しくて仕方のない人」だ。練習が楽しいのであれば、練習を毎日続けるのは難しいことではない。練習自体が楽しいのはどうしてか。この答えも簡単で、「やればやるほどに上達するから」である。自身の成果を振り返った時に、去年よりも上達していることを実感でき、来年は更に上達しているであろうことが容易に想像できるからこそ、練習に打ち込めるのである。1万時間分、上達し続けられるのであれば、確かにその人は一流の素質を持っているといえるだろう。

なかなか上達しない人は、1万時間に到達するずっと前に、嫌になってやめてしまうし、上達する人は練習を続けて、そのうち1万時間に到達する。1万時間という数字は、練習して上達する人にしか達成できない練習量であるという意味であり、上達しない人が全員ふるい落とされているであろう時間の目安でしかないということだ。
だから、1万時間ルールというのは言うまでもない、自明の定説であるといえるだろう。